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カミュ『異邦人』



親愛なるルームメイトと共に外出の折、俺の希望で図書館に寄り、「うーん何借りようかな…」「借りるなら早く借りろ」「ま、マテ、決まらない……もーこれでいいや、薄いしスグ読めそう」と適当に手に取ったのがコレだった。主人公が俺と似たような感覚と価値観をもった人だったから、共感できて楽しめた。適当に手に取ったのがコレだと、ちょっとした運命を感じていいですね。サマリと感想を書く。



勤め人をやっているムルソーさんが主人公。ある日かれのもとへ、養老院に入れた母親の訃報が届いたところから話は始まり、葬式の翌日に旧知の女性と再会し、ちょっとした恋人関係になる。彼女はムルソーさんに結婚を申し込み、ムルソーさんは、自分はきみをとくに愛してもいないけど、きみがやりたいなら構わんぜ、と承諾する。このことからわかるようムルソーさんは人に親切なので、隣人の女性トラブルに手を貸したり、ちょっと嫌われ者の老人にも優しくしてやっている。うるさ型の上司にもただイラつくことなく、まあ相手の気持ちもわかるしなあ、と度量の深い男だ。ある日隣人づきあいで海水浴へ行くと、女性トラブルの件で因縁のできてしまったアラビア人と遭遇し喧嘩になり、銃で撃ち殺してしまう。
ムルソーさんはとっつかまり、裁判にかけられる。付き合いのあった人たちはみんな彼に親切にしてもらっていたので有利になる証言をしてやるのだが、ムルソーさんとしてはそこまで減刑に積極的でもなかった。そういう態度や、彼が母親の葬式であんまり悲しんでないようにほかの人から見えたことが原因となり人間性を疑われ、裁判は不利な方向へ進んでしまう。裁判のやりとりや駆け引きにくたびれてへとへとのムルソーさんだったが、あるときやってきた司祭のあまりに上から目線の物言いと押しつけがましい憐みの言葉にさすがにブチギレ、感情のままに怒鳴りつける。それですっきりしたムルソーさんは、晴れやかな気持ちで処刑の日を迎えるのだった。



ムルソーさんに強く共感できたのはたぶん、彼が理性に重点を置いており、かつ理性に従って生きることがとても誠実なことだと考えている人間だからだ。ただわりと多くの人は感情をとても大事にしており、理性的なふるまいを徹底する者に厳しいところがあるんだよな。ムルソーさんに結婚を申し込んだマリイちゃんなんかはその典型で、結婚を望み、その要求を「愛はないがきみが望むなら」とかなえてやったムルソーさんに対し「私はあなたのそういうところが好きなんだけど、いつか同じ理由であなたが嫌いになるかもしれない」などとのたまう。いや、こういうことって俺も何度か言われたことがあるのだが、ええー、そういうのわざわざ俺に言う? って思っちゃうんだよな。大人なんだから、自分の好悪くらい、自分の責任で扱ってほしいものだ。なんかその言い方じゃ、俺のせいみたいじゃん。勘弁してくれ。しかもそういう子って、「愛はないがきみが望むなら、なんてのは勝手な予防線だ」とか言い出すんだよ。「全部私の責任にしようとしてる」って言うんだよ。大人なんだから自分の望みの責任は負えやー! こっちは親切で提案を受けているんですよ!? いや信じられないかもしれないけど、マジでいたんだって。3人くらい。いやまあ、マリイちゃんはそこまで言わなかったしその後の振る舞いも上品なものだったけどさ。

上述の通り、親切であるというのがムルソーさんに共感できる理由のふたつめだろう。客観的にみたら彼が親切にした隣人というのも女をぶん殴るようなやばい男なのだが、まあ、そういう世間的な善悪もあるだろうけど、目の前で助けを求められたら、手を差し伸べたくなっちゃうよね。

そんな素敵で、潔癖さすらあるムルソーさんが処刑になってしまうことに関してだが、んー、これはなあ。裁判や処刑なんてのは、言ってみれば人間社会というひとつの生命体が行う暴力だ。暴力から逃げる方法なんてのは、従順になることしかない。理性的で、自分のルールを自分で作り上げて自分なりに誠実に生きている人間にとって、暴力から逃げるために主義を曲げたり、従順なフリをするのはイヤなものだ。ムルソーさんはそれをしなかったから殺される。それだけのことだ。ちょっと残念だけれども、従順になることを選んだって彼の筋の通った生き方が死ぬことになるんだから、これはなあ、ムルソーさんの口癖どおり、「どちらでも同じこと」だろう。

「どちらでも同じこと」については、「人は石である」みたいな考え方がムルソーさんの根底にもあるんじゃないかなーと思いながら読んでた。

一見理性的に見えても根幹がブレッブレのキャラが多くいるなか、ムルソーさんは見ていて気分のよい主人公だった。感情を理性で抑え込むといっても性欲などはちゃんと認識し表に出していて、欲の扱いも手馴れていると思うしオトナでよかったよ。「どちらでも同じこと」とか言ってると「お前には欲求がないのか?」などとツッコみが入ることもあるけれど、それは的外れの指摘といえよう。何を選んでもそれなりに楽しむし、何が起きても自分のがんばり次第でなんでも楽しめるものだ。「どちらでも」というのは「固執しない」ということであり、「何にも価値を見出していない」ということではない。むしろすべてに価値を見出すことが「どちらでもよい」の神髄だと俺は思っている。


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