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貴志祐介『悪の教典』



先回の『吾輩は猫である』が三週間もかかっちゃってくたびれたから、さくっと読めそうなのを選んだ。そしたらめちゃめちゃ楽しめて上下巻を二日で読めちまった。サマリと感想を書く。



蓮見さんはとっても合理的で理性的な奴で、ガキのころから頭がまわり、生活の中で出くわすあらゆる問題をざっくざっくと迅速に片付けることができる高校教師だった。
嫌な教師がいれば殺し、自分より人気の男子がいれば殺し、それが両親にバレたら殺し、仲良しの同級生がレイプされればレイプ犯を拷問して殺し、同僚に横領の濡れ衣をかぶせ、教え子が万引きをしたらすぐさま一緒に謝りにいってやり、毎朝カラスがうるさければ罠を作って殺し、職場の学校でカンニングが起きれば違法な方法で防ぎ、クラスのいじめっ子は精神的に追い詰めて退学にし、モンスターペアレントは殺し、性的欲求がわけば担任クラスの子と寝て、それが同僚にバレそうになったら退職させ、生徒にバレそうになったら土に埋め、それが女子にバレそうになったら屋上から落とし、それも他の女子にバレちゃったから首を折る。
と、かなりうまくやってきたんだがそのへんでさすがに担任クラスのみんなに疑いが広がりマズいことになりそうなんで、かつてないほど大胆な解決法……クラスまるまる皆殺し計画を立てる蓮見さん。如才なく濡れ衣をかぶせる奴も用意し、クラス40人+当直教師の皆殺しに見事成功する。駆けつけた警察にもボロを出さず受け答えし、なんなくクリアー。と思いきやさすがに見逃しがあり、ささいな証拠から犯行が露見しちまう。これは残念。だが冷静な蓮見さんはすぐさま「すべては神の指示だったんですよ…」と狂人の演技を始める。責任能力の欠如を根拠に死刑をまぬかれる手である。弁護士団が結成され、コトは目論見通り進むこととなった。
この成り行きに事件の全貌をしる人々は、もしも釈放なんてされちまったこのサイコ野郎絶対殺しにくるだろ…、と戦々恐々であった。



スゲー読みやすかった! 主人公が理性的で冷静な話っていうのはやっぱり読んでて気分がいい。例の緑セレクションにまた一冊加えることができてホクホクだ。セレクションインの感想文では毎度書いてることだけれど、主人公がブレないというのは語り部として本当に理想的だ。そういう連中は決断が速く、話をサクサク進めてくれる。

同セレクションの『異邦人』なんかでは主人公が処刑されちゃったわけで、すわ今回もハスミンが死んじまうんじゃないかとハラハラしたが、これは杞憂に終わり一安心だ。しかも、生徒サイドもハスミンサイドもどっちも勝ち、って思えるようなラストだったのには感服。

ストーリーについては、これは親愛なるルームメイトの同意も得たことだけれど、俺たちは基本的に「主人公の成長済物語」が好きなんだ。だからこういうストーリー展開は俺としては大歓迎。ただルームメイトはグロがダメなのでコレはムリかな。

ほんで見過ごせないのが、蓮見さんがたった二回だけ「ブレ」を見せるところ。憂実ちゃんを殺さんとするときと美彌ちゃんを殺すときだ。俺はこういうシーンに弱いんだよな〜。キュンときちまう。いや「ブレる人が好き」なのではなくて「ブレない人が、不意に自分のブレを自覚して戸惑う」姿が好きなんだよ。マジョリティに受け入れられづらいハスミンのような奴にとって、自分の内面を理解しつつも受け入れてくるような上記二人のような女性って、グラリときてしまうものなんだよな。美彌ちゃんの場合は「グラリ」のタイミングではまだハスミンの内面に気づいているとは言い難いが、事件生還後に受け入れているような描写がある。ハスミンは心理に精通している為そのことを感じ取っていたのだと理解すれば辻褄が合う。

問題解決の方法に殺害を選ぶことについては、俺は妥当だと思う。それがどんな問題にせよ、「ぶち殺してしまうのが一番いい」のだ。これは愛すべきマックス・デミアンと同意見。


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