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| カテゴリ:感想文 |
神林長平『魂の駆動体』



これはガキのころ一回読んだことがあったんだけどほとんど話は忘れちまってた。でもとっても面白かった記憶があったんで、ずっと再読したかったのだ。サマリと感想を書く。



老人ホームのジイちゃんが、友人に手伝ってもらってオリジナルのクルマ設計を始める。ジイちゃんはクルマを運転し、自分の体の一部のように動かすのが本当に好きだったのだが、現代ではクルマはすべて、道路の一部、運転する必要もなく自動で走る文字通り自動車となってしまった。そこで自分で理想のクルマを、自分だけのクルマを作ってみたい、と始めるわけである。エンジンを決め、サスペンションとかスタイルとか…えーと俺にはよくわからない技術的なことをふたりでいろいろ考えて、いよいよ設計図が完成する。実際に作れるかどうかはともかく、とりあえず紙に印刷しないとな、とふたりはそれを大きな紙に印刷する。
…と、その紙が遥か未来、人類が絶滅した世界で発掘された。その時代には翼人なる人々が自在に空を飛びまわっている。彼らは昔存在していた人間という種族を研究しており、人間ののこした遺跡を発掘しーの、人間型のアンドロイドを作りーのして人間の行動を調べようとしていた。ただアンドロイドとはいっても人間の知識が詰め込まれたただのロボットなので、なかなか研究もはかどらないでいたが…、発掘された設計図をみたアンドロイドに突如意識が芽生える。これは自分が作った設計図だというのである。アンドロイドはそのクルマをどうしても作らなければいけないと直感する。翼人たちも、人間と活動すれば研究も進むだろうとクルマ作りを手伝ってくれる。素人の作った設計図なのでいろいろとアラもあり、そこは翼人の技術者とアンドロイドの相談でモディファイしつつ、とうとうクルマは完成する。乗り込んだアンドロイドはぐんぐんとスピードを上げていく。そのとき彼は、まるでクルマと自分が一体化したような感覚を経験する。クルマはぶっとんでクラッシュした。アンドロイドは体は無事だったが、もう人間の意識は入っていなかった。
ふとジイちゃんが目覚めるとベッドの上で、どうも設計図を印刷している最中に脳梗塞らしき何かでぶっ倒れたそうだ。目が覚めて友人は喜んでくれて、話題は設計図になった。ぶっ倒れてたジイちゃんだが、なぜか設計図にアラがあるのがわかるのだった。



いやー、やっぱ楽しめたよ! 俺はどうも、恋愛要素のない話は楽しめる傾向にある気がしてきたぞ。なんだろうちょっと悲しい。

昔読んだことがあると書いたが、いろいろ記憶違いがあって面白かった。俺が覚えてる限りでは、こういう内容だった。「主人公が遺跡に足しげく通っている。へんな部品がたくさん見つかる。あっ、この車輪という部品をくみあわせたらなんか乗り物ができるんじゃないか? とがんばって自転車を作る。自転車を作ったらもっと改良できる気がしてきて、つぎは自動車を作り始める。できた。やった!」…う〜ん微妙に違う! まあ、俺はなにか機械的なものを人が技術的にいじってる話が好きなんだと思う。そういう部分の記憶が強いからね。

この本の俺にとっての魅力は、ジイちゃんたちの会話と、クルマ作りに関する技術的な描写だ。理性的で落ち着いた会話は俺のストライクゾーンどんぴしゃりだった。そして技術的描写、これだけのものを書くためにどんだけの調べ物が必要になるんだろう…。

そういえばジイちゃんが共感できることを言っていた。
  • なにもしない時間が耐えられないのだ。すべての時間を意味のある情報で埋めないと不安になる。空白の時間は消去して、限りある自己という器の内部を最適化し、いつも効率よく情報をコンパクトに納めておかなくては気がすまない。(原文ママではない)
これは俺のコンプレックスのひとつだ。「今日なんにもしてねーな」って思うことが精神にダメージを与える。親愛なるルームメイト連中なんかは、よくぼーっと寝てる。俺にはできないことだ。生真面目っていうのかね。だから不良に憧れる。いや連中が不良ってわけじゃないんだけど…。連中は死んだ魚の目をした死んだ魚だ。


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| カテゴリ:感想文 |
福永武彦『草の花』



親愛なるルームメイトが、最近読んだ中でよかった本、と言ってたんで読んだ。サマリと感想を書く。



とあるサナトリウムに汐見くんという超然とした男が入ってくる。彼は無謀な手術に挑み、あえなく亡くなってしまう。彼は手術に挑む前に、サナトリウムの友人に2冊のノートを託していた。そのノートを開いてみると、そこには汐見くんの、孤独に満ちた半生が綴られていた。
学生のころ汐見くんは、同級生で同じ弓術部の藤木くんを愛していた。藤木くんの魂が純潔で美しいからだ。この愛は肉欲はまったくなく、精神的な愛であった。そしてお互いにそういう愛をもちあうのが汐見くんの夢であった。が、藤木くんはその愛を重いとバッサリする。自分はとても弱いので、人を愛して責任を負うようなことはとうてい無理なんだということである。その後藤木くんは亡くなってしまう。
藤木くんが亡くなったあとも、彼の妹である千枝ちゃんとの親交は続いた。ぶっちゃけお互い好きだったのだが、とうとう結ばれることはない。汐見くんは孤独であることを自分のアイデンティティにしており、そのうえで愛を求めていた。一方千枝ちゃんは、まあもちろん汐見くんのことは付き合い長いし大好きなんだけど、孤独が自分を決して受け入れないとおもっていたし、そんな高尚な愛に応えることはできないというわけであった。
ノートを読んだ友人くんは千枝子さんとやらにこのノートを渡すかどうか迷って、とりあえず手紙を出してみるが、千枝子さんのお返事は「読んだところで返らぬ後悔を感じるばかりだと思うからいらない」だった。



孤独の思想をもった人がどういう人生を歩むことになるか、って小説だ。俺も似たような思想はもってるんでなんとか想像できたよ。つまりアレだろう、人のことは大好きなんだけど、「この子好き好き大好きモード」に入れないってことだろ? 好き好き大好きモードに入れないから本当の意味で人と一緒になれた気がしなくて、孤独を感じるんじゃないのかな。そのうえふたりは信仰の面で思想がだいぶ違うので、わかりあえた気にもなれないのだろう。もうちょっと気楽に生きろ…って思っちゃうぜ。同じ人間とはいえ別の生き物なんだから、ふむふむそういうのもあるのね、俺には関係ないけど、って程度におさめておけばいいのだ。汐見くんも千枝ちゃんも、自分の思想を相手に押しつけようとして傷つきすぎだぜ。壁に向かってドッヂボールぶん投げて跳ね返ってきて「いてえ!」って言ってるようなもんだ。壁はお前と同じ生き物じゃねーの。だからボールを受け取ってもらえることはねーの。

とはいえ。そうやって傷ついたからこそ、サナトリウムに入るころの汐見くんは超然とした紳士になっているんだろう。いやー、サナトリウム時代の落ち着いた汐見くんをみたあとで過去の汐見くんを見たときは、お前昔こんなアホだったのかよ! とびっくりしてしまった。振る舞いがいちいち未熟なのだ。でも傷つきながらものを考えてきた人間が、最後にはああいった落ち着いた人になるというのは納得だ。「お前ら思想押しつけすぎ」と上述してしまったが、サナトリウム時代の汐見くんはかなり他人のことを受け入れられている。

ルームメイト「草の花読んだの!? みどりんこういう話ぜんぜん好かないでしょ…」
俺「傷ついてるヒマあるならジョギングでもすればって思う…」


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| カテゴリ:ゲーム |
セブンスドラゴン3 code:VFD クリアまで



以前よりウワサを聞きかじっていたセブンスドラゴン。ATLUSの古いゲームをお店で探していたら、たまたま目に入ったんでプレイしてみた。正味なところあまりビビッとくるゲームではなかったんだけれど、プレイはとってもしやすくて、ストレートにラストまでこれた。ストーリーのサマリと感想を書く。



平和な現代東京。主人公は最近ウワサのドラゴン討伐ゲーム、セブンスエンカウントの体験会にやってくる。うえーい超楽しいぜーとプレイする主人公だが、実はそのゲーム、竜狩りの資質を判別する試験機であった。資質をかわれた主人公はスカウトをくらい、まもなく現れるとされる真竜の脅威から世界を守る竜狩りとして、ゲーム会社改め地球防衛軍ノーデンスに所属する。
具体的にどーすんのっつーと、ぶっちゃけこれから現れる真竜にはとうていかなわんので、タイムマシンで過去と未来へ出張し、そこで現れる真竜からその検体をゲット、そのデータをもとに現代の真竜を調査、撃退するというのがノーデンスの作戦らしい。なにそれうえーい超楽しそーという感じで過去と未来の真竜を叩きのめし、めきめき頭角を現す竜狩りこと主人公。
やがて現代にもドラゴンが現れ東京は大混乱。加えてノーデンスの連中もばったんばったん倒れていき、最後に残ったのはノーデンス社長。なんとやっこさんの正体は真竜であり、主人公たちに竜狩りをさせたのは彼らを最強の7番目の真竜セブンスドラゴンとして宇宙の主にしたてあげ、宇宙の世代交代をさせるのが目的だったそうだ。最後に社長を倒し、すべての検体と主人公が融合すれば真竜になっちゃうそうだ。
マジかよどーすりゃいーのと悩んでいると、突然現れた博士が検体をちょちょいっといじってくれて、真・ドラゴン検体にしてくれる。これを使うと、融合の瞬間主人公の意志がセブンスドラゴンの意志に打ち勝てば元通りの世界を取り戻すことができるらしい。うえーい超助かったぜ突然現れた人! そういうわけでセブンスドラゴンの意志を打倒した主人公は真竜のいない世界を取り戻し、平和な東京に戻ってきたのだった。



感想とか
  • 一本道シナリオは、自分の意思と主人公の選択の方向が合っているとかなりストレスフリーなんだけど、そこが食い違うと途端にダレちまうな。今作でいうとノーデンス社長の正体が明かされるまではだいたい俺がやりたいことを主人公もやってくれたんで楽しく進めた。ただ「お前が真竜セブンスドラゴンになれ」と言われたとき、俺は「おおそういうことか。任せろ」って思っちゃったものだから、「そんなのごめんだ! 人間を舐めるなよ!」って方向にシナリオがむかうのには参ったぜ。まあ、これはRPGやるからには仕方ないだろう。
  • 戦闘が単調だ。固定メンバーの、いくつかの固定スキルで裏ラスボス以外は倒せた。
  • 転身とかそういうキャラ強化のシステムは一切使ってない。使ってないというか存在に気付かなくて、クリア後に攻略サイトをぱらぱらとめぐったとき初めて知った。そのうえ奥義も一度も使わなかった。戦闘の難易度に対して主人公サイドの引き出しが多すぎる。
  • パーティ分割について。メインパーティ1つをサブパーティ2つが後方支援するのが基本なんだけど、たまにFF6みたいなパーティ分割が発生する。これは演出としては好きな部類なんだけど、普段アシストスキルしか使わないサブパーティでいきなり帝竜を叩けと言われても困るぜ。ただし「これがイヤな人はやらなくてもいいよ」とばかりに全ルートメインパーティで進むことができる仕様にもなってるので、そこは設計した人エライと思う。
  • ゲームのテンポはかなり良かった。レベルアップで全回復するシステムなんかはダンジョンウォーキングを快適にしてくれた。
  • このゲームとか、ブレイブリーデフォルトみたいな等身のデフォルメキャラは苦手。フィールドを歩いてるときならともかく戦闘中がこれだとなんつーか、指人形で遊んでるような気分になるというか…。そのうえ人間型の敵までデフォルメキャラというのは…。ユウマくん戦はかなりシリアスだったと思うんだが、指人形が…。
  • ミオちゃん関連イベントのとき、たまたまパーティリーダーを代えているとミオちゃんが親友をコロコロと変えるアバズレみたいになって苦笑い。


メンバーは全員知り合いをモデルにキャラメイクした。普段は以下を固定メンバにしてた。
エージェント
ハッキングからの睡眠、もう一度ハッキングしてからのロストパワーが主な役目。というかな、ロストパワーの攻撃力低下が強すぎる。ゴッドハンドにも攻撃力低下スキルがあるけど、こっちはダウン量が桁違いだ。ハッキングが効かなかったのは裏ラスボスのみで、そこはさすがにメンバーチェンジをした。
ゴッドハンド
カウンターとリアクトでの敵タコ殴りが役目。だいたいのボスはこいつが落とした。
フォーチュナー
リジェネと防御力アップが役目。リジェネは多大に役立ったが防御力アップスキルはほとんど効果を感じなかった。職ごとのデバフ効果に差がありすぎないか?

以上の固定メンバはエージェントとフォーチュナーの補助でゴッドハンドの耐久を上げ、ゴッドハンドが攻撃を受けきるのが前提となっているので、バ火力の裏ラスボスにだけは対応できなかった。そこで裏ラスボスはルーンナイトの身代わり+騎士の誇り、メイジのデッドマンズリアクト+シールドクラフト+リザレクションのコンビで撃破(上画像メインパーティがそれ)。



いっこバグに出会った。

カザン共和国の竜反応がずっと1残り続けてる。


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| カテゴリ:感想文 |
ホーガン『星を継ぐもの』



サマリと感想を書く。



ある日世紀の大発見が月でなされた。宇宙服を着た、人の死体が見つかったのである。持ち物はとうてい地球上のものではなく、死体の放射性炭素同位元素を調査したところ、彼は五万年前に死亡していたことが分かった。なんなんだコイツは? 宇宙人なのか? しかし、彼の肉体はどう見ても現代人と同じつくりなのだ。別の惑星で、人間とまったく同じような生き物の進化が発生するなんてことがあるのか? いったいなんなんだコイツは。コイツはコードネーム「チャーリー」と名付けられ、彼の正体をさぐるプロジェクトがはじまったのである。

まず調査隊が月をさらに調べたところ、さらに複数のチャーリーの仲間らしき死体が見つかり、その持ち物から、地球のものではない魚の死骸が発見され、チャーリーたちが地球以外の星……それはミネルヴァと名付けられた……からやってきたことが分かる。加えて月がいまクレーターの穴ぼこだらけなのは大量の核爆発のせいであることが判明し、過去、なぞの大戦争らしきものでミネルヴァは爆散したのではないかと仮説がたつ。一方、木星の衛星ガニメデでは謎の宇宙船が発見され、内部ではもうどう見ても人間とは違う、宇宙人の死体と、大昔の地球の動植物の標本が出てくる。その宇宙人はガニメアンと名付けられ、コイツはどうも、俺たちよりもCO2に相当弱い身体を持っていたと調査で明らかになる。 さらに暗号解読班がチャーリーの所持していた日記を解読したところ、かつて月は今は亡きミネルヴァの衛星であったことが判明する。

つなぎ合わせると以下のような結論となる。すなわち、ずーっと昔にガニメアンはミネルヴァで幸せに暮らしていたんだが、なんかの理由でミネルヴァはCO2が大発生してしまい、ヤバイマジ酸素足りない状態に陥る。そこでわっせわっせと宇宙船で地球までいき、CO2に耐性のある地球の動植物を輸入したのである。彼らがCO2を減らしてくれればと願って。残念ながらそのたくらみはうまく運ばず、ガニメアンたちはとっととミネルヴァを去る。残った元地球の連中は環境に適応し、進化し、やがて現代人と同じようなレベルに達する。そのころ大戦争が勃発しミネルヴァは大破してしまうが、たまたまチャーリーたちは月に出張してたんで難をまぬかれたのである。ミネルヴァの崩壊でぶっとんだ月は地球のそばに飛んできたので、現在月は地球の衛星になってるというわけだ。その後チャーリーの仲間は月に残った宇宙船で地球へやってきてネアンデルタール人を滅ぼし、そのハングリー精神を、子孫である俺たちに伝えたのである。



いやーこれはとっても読み応えがある話だった。これだけ重厚な学術的ファンタジーを書くために、いったいどんだけの調べ物を必要とするんだ? びっくりだ。一番最初にまず問題(謎)が提示されて、それを一冊かけて解いていくという構成もわかりやすくて好み。とにかく俺が大好きなタイプのミステリーストーリーだった。あと恋愛がまったく含まれないのも俺にはよかったな。猛烈な勢いで読んじゃったよ。

どうやらこの作者はたくさん著作があるみたいで、とくに『ガニメデの優しい巨人』『巨人たちの星』は『星を継ぐもの』の続編らしい。これはきっといつか読んでしまうなー。


| 緑色 | 感想文 | comments(0) |
| カテゴリ:感想文 |
ハインライン『夏への扉』



ファンタジーかSFみたいなのを読みたかったんで、それっぽいものを選んで読んだ。サマリと感想を書く。



主人公のダニーはもっぱら技術者気質で、こだわりをもってスゲー発明品を作り出しまくっている。共同経営者の手腕で儲けも上々、美しい婚約者もいて順風満帆ってところだ。が、そのふたりの裏切りによりダニーはあっという間に会社を追い出され、株券と発明品も取り上げられてしまう。許さんぞーとふたりの家に乗り込んだダニーだったが、クレイジー元婚約者の手にかかってあえなくコールドスリープに叩きこまれる。
30年のコールドスリープから目覚めた無一文のダニーは例のふたりを探すが、なんと彼らはあの直後に会社を失い破滅していた。あの直後、ダニーから取り上げた株券と発明品を何者かに盗られたそうだ。ざまあーっ! …は良いんだけど、ひとつ気になることがあった。現在の世の中に、どうも彼がずっとあたためていたのと似た発明品が出回っているのだ。しかもその特許は彼の名前ではないか。もちろん自分にそんな記憶はない。これはなんぞや? とか思ってたら偶然スゲー噂を耳にする。そう、タイムマシンが実在すると。さては、未来の自分がタイムマシンで過去に戻り、発明の特許をとり、例のふたりを懲らしめたんじゃないか? と考えたダニーはその道筋を自分もたどることにする。タイムマシンの発明者を見つけ出したダニーは言葉巧みに自分を実験台にさせ、過去に戻ることに成功する。
過去に戻ったダニーは発明をして特許をとり、例のふたりのガレージから盗まれた自分の発明と株券を持ちだしてしまう。すでに上位互換があることだしその発明はさっさと破棄してしまうのだが、株券は、彼にずっとなついてくれていた小さな女の子に譲渡することにする。いまから30年、自分はまたコールドスリープするんでいなくなっちまうけどゴメンねーと言って。しかしその女の子は行かないでくれと頼む。実はダニーに惚れ込んでおり、元婚約者がクレイジーであることも気付いており、ずっと心配してくれていたのである。であれば成人したときまだ好きでいてくれるならば、そのとき自分と同じ時代までコールドスリープして来たまえと言い残すダニー。
未来で再会したふたりは結婚し、こんどこそ信頼できる共同経営者と会社を作ったダニーは幸せに暮らすのだった。



いや実はびっくりしたことがあってな。この女の子はフレドリカちゃん、ニックネームをリッキイっていうんだけど、この子、おととしくらいハマってSSまで書いたゲーム「新世界樹の迷宮」の元ネタだ。あのゲームのヒロインもフレドリカちゃん、ニックネームをリッキイっていって、過去の世界からコールドスリープによって主人公の時代に飛んでくるんだよ。絶対元ネタだ。いやーびっくりしたよ。本編よりもこの偶然の出会いに感動した。

「すべての猫好きにこの本を捧げる」と序文でのたまってるわりには物語の本筋に猫が関係しない件について。いや確かに関係しないんだけど、「書いてるのは猫全然関係ないSFバナシなんだけど、猫が好きだからちょこちょこ猫を登場させたい」みたいな猫好きのオーラ圧を感じることはできた。であれば多分、猫好きが読んだら、「ああその気持ちわかるわかる」ってなるかもしんないね。そもそも「猫好きに捧げる」んであって「猫好きにオススメ」ではないんだから猫が活躍する確約はなかったな。

主人公がアクティブで前向きなのがよかった。楽しめたよ。



余談。猫好きの中の猫好きである、親愛なるルームメイトにこの本の話をしてみた。
俺「夏への扉って本を読んだんだけどさ、これが…」
ル「ああ猫全然関係ないやつですね。昔まんまと釣られました」
俺「あはははは!」


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| カテゴリ:感想文 |
舞城王太郎『阿修羅ガール』



先週とかに読んだ『嘔吐』とか『異邦人』より易しい文章の本が読みたいなーとか思って読んだ。サマリと感想を書く。



飲み会の帰りにノリでクラスメートと寝た主人公、愛子ちゃんが翌日ガッコへ行くと、そのクラスメートが昨晩のうちに失踪し身代金の要求がきていた事を知る。最後に会ったのはお前なんだから、なんか知ってんだろ、オラ、と同級生たちから詰め寄られる愛子ちゃんだが、知らねーよまったくという感じ。知らねーは知らねーが、片思いの男の子が失踪したそいつの行方をがんばって追っているそうなので、一緒に追えばちょっと仲良くなれちゃったりするんじゃね? と若干不謹慎な愛子ちゃんだ。そのころ近所ではろくでもなし共による「調布アルマゲドン」なる大規模な乱闘騒ぎが起きており、ガクブル愛子ちゃんは家にこもっていたのだが、その騒ぎに乗じて現れた、愛子ちゃんに恨みのある同級生に金槌で殴り倒されてしまう。
生死の境にある愛子ちゃんは自分の内面世界なのか何なのか、妙ちきりんな世界に迷い込んだり、謎のホラーな謎の森をさまよったりするが、突如現れた霊能者と片思いの男の子の働きにより死から救われギリ生霊としてこの世にとどまることができた。しかしその生霊は、巷で少々有名な猟奇殺人鬼の中に入り込んでしまう。混乱した殺人鬼はビルから身を投げて死ぬが、どうやら愛子ちゃんは戻ってこれたようである。戻ってきた愛子ちゃんは臨死体験を通しちょっと精神的に大人になって、片思いの男の子にはフラれたけれど今度は助けてくれた霊能者のことが気になって……でももう衝動的に行動する愛子ちゃんではないので、とりあえずは落ち着いて自分の世界を見つめてみるのでした。



い、意味がわからねえ…。拉致られたクラスメート、同級生たち、アルマゲドン、金槌女、謎の森、突然の霊能者、殺人鬼「グルグル魔人」といったアクのある連中が、よくわからん脈絡で登場しては詳しく語られないまま打ち捨てられていく。これはアレかな、この話の主題は愛子ちゃんの成長であり、その材料として現実的なものもオカルティックなものも非現実的なものも用意して愛子ちゃんにぶつけまくって、最終的に成長した愛子ちゃんステキング♪ って感じの楽しみ方をすればいいのかな。あるいは、アッパーな語り口の愛子ちゃんがハチャメチャにビュンビュン東京やら魔界やらを飛び回る、ワクワク系ファンタジーとして楽しめばいいのかな。後者のほうが適切かもしんない。あんまり意味とか求めてもストイック過ぎるもんなあ。そこは親愛なるルームメイトの読書スタイルを見習おう。あいつは「わからん読むのやめた」「おもろい全部読んだ」くらいしか本に対する感想がない。

最初の狙いどおり、文章は読みやすくてさくっと読めた。


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